コースマネジメント

1979年アメリカセミナーでコースマネジメントという言葉を初めて聞いたがコース管理のことだとばかり思っていたら、講師は私たちをコースに連れて行って局面毎の状況判断要素を指導してくれた。「なーんだ、コースガイダンスのことか」と思ったのは早合点で、その頃アメリカではゴルフイノベーションが始ったばかりで、田舎ザムライにはアメリカの志を理解するには遠く及ばなかったようである。USGA(全米ゴルフ協会)ではコースレート査定とハンディキャップ制度の抜本的改革研究に乗り出していたし、米国ゴルフ設計家協会ではあらゆるゴルファーが本当のゴルフを楽しめるようコース設計に画期的変革をもたらそうとしていた。同じコースで上級者と初中級者がそれぞれの楽しさを追求できるコースデザインの探求である。衛星放送で中継されるコースの美しさは目を奪われるようであるが、美観と戦略性と経済性を同時実現した現代の米国ゴルフ場開発技術は賞賛に値する。

 

孫子の兵法に「敵を知り己を知れば百戦これ危うからずや」という戒めがあるが、ストロークプレーではコースのスロープを知ることが敵を知ること、最新インデックスを承知していることが己を知ることに当たる。スロープもインデックスも分からず「えっ!それってなに?」と言うと「敵を知らず己を知らざれば百戦これ危うし」ということになる。若ザムライには知略に長け礼節を重んじ勇敢であって欲しいと思うのは私一人だけではあるまい。若者自身も世界に通用する日本人のアイデンティティを持ちたいと願っているようだが、日本人は日本人を自覚するだけで立派なアイデンティティをもつことになる。正直・律儀・礼節が日本人の三大特性で意識すればDNAが働いてくれるはずだ。このDNAはゴルファーにとっても欠かすことのできない特性だから、基本的にゴルフは日本人に向いている。しかし闘うとなれば更に知略が必要となる。

 

現代マネジメントゴルフをするには、三大特性に知略が伴わなければ突撃と玉砕を繰り返すことになるが、私たちの先祖には楠正成、真田雪村、東郷平八郎など知略に長けたサムライもいる。コースマネジメントとは知略をもってコースと闘うことを意味するから、難しいコースに挑戦するにはまず敵を知り己を知ることから始めなくてはならない。90%以上がホームコースを持たないツアゴルファーになった現代では、闘う相手となるコースの情報をどれだけ持ち、いかに作戦を立てたかで結果が決まる。コースマネジメントの重要性は益々高まるはずだが、私たちはやっとグローバルワールドの入口を見つけたばかりだ。

 

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