全英女子オープンが終ってみればアジアの時代を告げる結果に終った。
以前から21世紀はアジアの時代と言われてきたが、ゴルフの世界にもアジアの時代が来たことを痛切に感じる。20世紀はアジアの中でも日本だけが突出していて、日本はアジアの一員ではないかのように言われてきたが、20世紀末から日本の地位や力が相対的に弱まり、中国・韓国・台湾などアジアの地位や力が強くなってきたことが誰の目にも明らかだ。全英女子オープンの結果を見ると、優勝ヤニ・ツェンが台湾選手、ベストテンに韓国選手が4人いてアジア選手が半数を占める。上位20位を見ると韓国選手3名に日本選手1名が加わり合計9名がアジア選手で、その内訳はアジア勢9名に対して欧州勢7名、米国勢4名という結果だった。数字が如実にアジアの時代を告げている。アジア勢9名の中に日本選手一人というのは寂しい気がするが、トーナメントスポンサーは日本企業(リコー)というのも考えさせられる。
21世紀に入って日本は、量的成長から質的成長に変わらなければいけないと言われ続けながら、未だに量的成長に拘っている点がないだろうか。全英女子オープンを見終わってそんな気がしたが、舞台を支えているのは日本でその舞台で活躍するのはアジア選手。これが21世紀はアジアの時代といわれる舞台構造ではないか。世界中がアジアの成長に期待を寄せているときに、今まで通り日本がアジアのリーダーで世界一でなければならないと思うのは、いささか時代錯誤で傲慢ではないかという気がした。これからの日本はアジア発展を支える礎石となるべきで、いつまでも舞台の主役を務めようなどと考えてはいけないのではないか。スポーツの世界では出場選手の数を競う、優勝回数を争う、メダル獲得数を競う。経済の世界ではGDPを競う、貿易量を競う、成長率を誇る時代ではない。世界の安定やアジアの発展のために、日本は何をしなければいけないかを考える時代がやってきたようだ。
3.11大震災のあと世界中から「がんばれ日本!」のコールが起きているが、その意味は日本の忍耐強い頑張りで世界に平和と秩序をもたらせて欲しい、発展と安定を実現して欲しいということではないのか。世界唯一の被爆国日本は平和憲法と非核三原則を守っている。その被爆国日本が原発事故でまた被曝した。その日本に今度こそ核廃絶のリーダーになって欲しいというコールが世界中から起きていると考えるべきではないのか。原爆を何発もっているか、原子力潜水艦や空母を何隻もっているか、原子力発電が何基あるかという量や力を競い合う時代が終わり、世界の平和や安定を如何にして実現するかが問われる時代に、日本にはそのリーダーになる資格も能力もある。「がんばれ日本!
いま世界中から「がんばれ日本!」のコールが起きている。先週、北京を訪れた際に多くの中国人から励まされたが、彼らは真剣に心配してくれていることが言葉や表情から窺い知ることができた。反日教育を受けている君達がどうして日本や日本人を心配してくれるのか不思議に思って、日本の実情に詳しい中国人に聞いてみて驚いた。中国では国を挙げて反日教育をしているなどというのは、日本のマスコミがでっちあげた真っ赤な嘘だというのである。もし事実なら、周りにいる若者達に聞いてみるがいいという。早速ゴルフ練習場にいる若者達に聞いてみると、キョトンとした顔で笑っている。それどころか日本に行きたかったのに、大津波と放射能で日本に行けなくなってしまったのが残念だという。それも流暢な日本語で語られてはビックリ仰天である。彼らにとって憧れの日本が、災害でめちゃくちゃになって失ったのは本当に残念らしい。一番乗りで日本に救援隊を送った中国政府に、彼らは心から拍手を贈ったというのは嘘ではなさそうだ。
多くの知り合いの中国人を思い出してみると、私たち日本人に対して反抗的な人は一人もいないし、それどころか大変親しみがもてる。瀋陽から嫁いできた甥の御嫁さんなんか、全身で喜びを表現していて瀬戸の花嫁のようでかわいい。
確かに言われてみれば、反日教育で育った若者が日本に憧れを抱くはずがないし、周りに反日的な若者が一人や二人いてもおかしくない。少なくとも私の周りには一人もいない。一体誰が情報操作しているというのだ。私たち日本人は最近マスコミ情報や政府発表を信用しなくなっている。インターネットが普及する以前に、私たちはずっとおかしいと思い続けているし、尖閣諸島事件の映像流失から決定的に疑い始めた。原発事故に至っては本当のことは何も語られていないと思っているし、政府は何の対策もしていないと確信している。
アジアで最初に日本で咲いたゴルフ文化の花は段々しぼみかけているが、今度の大地震で本当に枯れてしまわないか心配になってきた。国際舞台では韓国人プロが大活躍しているのに日本人プロは今ひとつさえない。中国ではゴルフが日増しに盛んになってきているから、中国人プロが国際舞台に踊り出てくるのは時間の問題だろう。既に「NGFワールドカレッジ」に二人の中国人女性が入学しているが、提出される日本語レポートの優秀さに驚いている。彼らが本気になって勉強し練習し始めたら、経済だけでなくゴルフの世界でも日本を追い越すかも入れない。既に中国で開催されるワールドトーナメントは完全に日本を凌駕した。このままでは間違いなくゴルフ二等国に転落するが、復活再生する方法はあるのだから、とにかく「がんばれ日本!」だ。
東日本大震災から1ヶ月経たないうちにマスターズが始った。日本から4人のサムライが出場したが、そのうちの一人松山英樹は被災地仙台から出場したアマチュア選手である。日本はもう大津波で沈没してしまうのではないかと世界中が心配する中で、世界のゴルフ祭典「ザ・マスターズ」に、しかも被災地からアマチュア選手が出場したわけだから、私たち日本人にとってもほろ苦い喜びである。日本選手の帽子に「がんばれ日本!」のワッペンが付いているのは痛々しい感じすらしたが、地球の表と裏でこうも状況が違うものかと世界の大きさを感じさせられた。
ゴルフは典型的な個人競技でありながら、ワールドトーナメントではひとり一人が国旗を背負って出場している。英国にいたっては英国旗を背負わずスコットランド、イングランド、ウェールズ、北アイルランドの王国旗を背負ってる。国の名誉を背負って出場するものにとって、自己実現より責任負担の方が遥かに重いだろう。世界中から「がんばれ日本!」のエールを送られてプレッシャーを感じない方がおかしいが、今回の「がんばれ」の意味合いは普段と大分違う。不幸や悲しみに負けるなという意味で多くの同情が含まれているから、Vサインで応えるわけにはいかない。軽く帽子に手を添えて会釈するくらいしかできないが、不幸や悲しみを背負っているものの頑張りには胸に熱いものを感じる。日本から出場した若者に多くの人が抱いた共通感情だろう。
まだ10代という若者二人を、マスターズ決勝ラウンドに送り込んだ日本のゴルフ界は前途洋々に思えるかもしれないが、実際は暗雲が垂れ込めている。バブル崩壊から20年、未曾有の破綻劇を繰り返し、10兆円近い損失と200万人近いゴルフ難民を生んだとされるが、3月11日の震災で更なる地盤沈下をしたと思われるからである。しかしゴルフには強い生命力があって、ゴルフ場は何度倒産しても経営者を取り替えて復活してくる。今度こそ本物の経営をして年金生活者や失業者、お金の無い若者やジュニアがゴルフの夢を追いかけられる舞台を提供して欲しい。東京都の「若洲ゴルフリンクス」など世界に恥ずべき公営ゴルフ場といえるが、若洲ゴルフリンクスが国際標準料金になったときが日本のゴルフが民主化したときといえる。石原知事はゴルフの文化性や教育性を良く理解されている人だから、東京から日本を変える政策によって、日本のゴルフに夜明けがやってくるかもしれない。日の丸背負って世界に飛び立っていく若者達が機内から若洲ゴルフリンクスに手を振るときが早く来て欲しい。