日の丸背負って

東日本大震災から1ヶ月経たないうちにマスターズが始った。日本から4人のサムライが出場したが、そのうちの一人松山英樹は被災地仙台から出場したアマチュア選手である。日本はもう大津波で沈没してしまうのではないかと世界中が心配する中で、世界のゴルフ祭典「ザ・マスターズ」に、しかも被災地からアマチュア選手が出場したわけだから、私たち日本人にとってもほろ苦い喜びである。日本選手の帽子に「がんばれ日本!」のワッペンが付いているのは痛々しい感じすらしたが、地球の表と裏でこうも状況が違うものかと世界の大きさを感じさせられた。

 

ゴルフは典型的な個人競技でありながら、ワールドトーナメントではひとり一人が国旗を背負って出場している。英国にいたっては英国旗を背負わずスコットランド、イングランド、ウェールズ、北アイルランドの王国旗を背負ってる。国の名誉を背負って出場するものにとって、自己実現より責任負担の方が遥かに重いだろう。世界中から「がんばれ日本!」のエールを送られてプレッシャーを感じない方がおかしいが、今回の「がんばれ」の意味合いは普段と大分違う。不幸や悲しみに負けるなという意味で多くの同情が含まれているから、Vサインで応えるわけにはいかない。軽く帽子に手を添えて会釈するくらいしかできないが、不幸や悲しみを背負っているものの頑張りには胸に熱いものを感じる。日本から出場した若者に多くの人が抱いた共通感情だろう。

 

まだ10代という若者二人を、マスターズ決勝ラウンドに送り込んだ日本のゴルフ界は前途洋々に思えるかもしれないが、実際は暗雲が垂れ込めている。バブル崩壊から20年、未曾有の破綻劇を繰り返し、10兆円近い損失と200万人近いゴルフ難民を生んだとされるが、3月11日の震災で更なる地盤沈下をしたと思われるからである。しかしゴルフには強い生命力があって、ゴルフ場は何度倒産しても経営者を取り替えて復活してくる。今度こそ本物の経営をして年金生活者や失業者、お金の無い若者やジュニアがゴルフの夢を追いかけられる舞台を提供して欲しい。東京都の「若洲ゴルフリンクス」など世界に恥ずべき公営ゴルフ場といえるが、若洲ゴルフリンクスが国際標準料金になったときが日本のゴルフが民主化したときといえる。石原知事はゴルフの文化性や教育性を良く理解されている人だから、東京から日本を変える政策によって、日本のゴルフに夜明けがやってくるかもしれない。日の丸背負って世界に飛び立っていく若者達が機内から若洲ゴルフリンクスに手を振るときが早く来て欲しい。

 

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