「ゴルフは習うもんじゃない、慣れるもんだ」。ずっと昔からそう言われ今もそう信じている人は意外に多い。そういう人は「ゴルフの基本て何ですか」と聞かれてほとんどの人が「うーむ」と言って腕組みをする。教育の基本は昔から「読み書きそろばん」と言われてきた。現代は「ケータイパソコンネット」と言うべきかも知れない。小学校に入る前からケータイを持たされ、小学校に入るとすぐパソコンとインターネットの使い方を習う。21世紀最先端技術で武装した情報処理手段の使い方を習うのは凄いことだとは思う。しかし問題は最先端技術を使って何を習うかがはっきりしていないことだ。
「ケータイパソコンネット」があれば世界中の古典知識から最新情報まで入手できるし、知らなかったことが即座に分かる。そのスピードは驚くべき速さで「インターネットは学習の高速道路」と言われるとおりだ。だから大人たちは自分たちがうまく使いこなせない「三種の神器」を子供たちには早くから使いこなせるようにと教育基盤に導入したのだろう。しかし評価はさまざまだ。子供たちは三種の神器にはすぐ慣れたが、何を習ったらいいか分からないから、興味本位に習わなくていいことを習い、知らなくていいことを知ってしまった。お陰で子供たちは早熟現象を起こし「何でも知っているが何もできない人間」に育ってしまったようだ。
早熟現象が良い方に出た例も多い。スポーツや囲碁将棋の世界では10代のトッププレーヤーが続々と誕生している。これはメディアの進化によって子供の頃から世界的トッププレーヤーの姿を見ることができるからだろう。「子供は物真似の名人」と言われるが一流の業を見ることによって、どんどん吸収できるからに違いない。ケータイパソコンネットのお陰だろう。「百聞は一見にしかず」とはこのことで、まさに何を習うかがとても重要なんだと思う。「習うより慣れろ」と言ってがむしゃらにボールを打つ人がいるが、「ハタチ過ぎれば唯の人」がいつまでも子供染みたことをしていては進歩がない。ハタチ過ぎたら何を習うかハッキリさせて、一歩一歩基本を習うべきだ。それにはケータイパソコンネットがとても役に立つ。旅をするにも初めての家を訪ねるにも事前にケータイパソコンネットで調べれば驚くほど楽だ。モノを習うのは旅をするのと一緒だから、基本ルートを調べておけば無駄足を踏んだり遠回りしなくて済む。特に高齢社会を迎えて60歳からゴルフを習う人も多いはずだから、ケータイパソコンネットを使えば老後の人生が豊かになる。ウェブ上に立ち上げたゴルフ大学で全国の高齢者が学ぶ日はそう遠くないないはずだ。
「インターネットは学習の高速道路」と言った人がいたが、自分でインターネット学習してみて本当にそう思える。インターネットはキーワードを入力するだけで百科事典、専門書、新聞雑誌テレビを脇において勉強しているような気分になる。そのうえ専門書に書いていないことやマスコミが報道しないことまで分かるし世界中から学べる。イヤハヤ高速道路なんていう生半可なものではない。ビックリ仰天である。そのかわりウソやウソっぽいものも多くうっかりすると騙されそうだ。ネット上はまさに玉石混淆(読み方が分からない、意味が分からないときはインターネット検索すればすぐ分かる)だから、反って本物を見つけ出すのが難しくなった。高速道路を突っ走るどころか、ゴミ収集車でゴミを拾って歩くことになりかねないからだ。
インターネットを開くたびに、自分が如何に小さなミクロ世界に住んでいるか思い知らされるが、生きていくうえで知らなくてもいいことが山のようにある。
知識や情報の山から本当に貴重な玉石を見つけ出して磨き上げたいと思うが、その玉石がなかなか見つからない。ネット上には「ゴルフの秘訣」や「飛ばしの秘訣」を語る独自説が充満しているが、本当の秘訣なんて1%どころか万にひとつもない。そんな中で1968年大英ゴルフ学会が発表した『Search for the Perfect Swing』が辿り着いた、「世に完璧なスイングはない」という結論こそ、玉石に違いないと感じた米国PGAゲーリー・ワイレンが、オレゴン大学で博士号を取得した学位論文『法則原理選択性理論』で秘訣がないことを、理論的に説明して見せた。「誰がどんなスイングで打ってもボールは物理法則に従って飛ぶことしかできない」という結論だ。
1976年PGAマガジンにこの論文が掲載されて、米国ゴルフ界は騒然となった。あたかもコペルニクスが『地動説』を発表したときのように。秘訣を求めて血の出るような修行を積んでいるトッププレーヤーや達人達は「自分の努力は何だったンだ!」と思ったに違いない。しかし、実際は達人たちの絶望の中からゴルフのイノベーションが始ったのである。スイングの法則原理を知ることによって秘訣とかミラクルと言われたショットが、一定のトレーニングによって誰にも可能になったばかりか、3年掛かったものが1年で、10年掛かったものが3年で達成できるようになった。だから16歳のチャンピオンが誕生しても少しもおかしくない時代が到来したのである。本物をみつけて学習したものだけが到達できる、高速道路サービスエリアである。
21世紀はITグローバル化の時代といわれ、なるほどそうだと思う。
インターネットを見れば日本のプロが世界の何位にランクされているかすぐ分かるし、お隣の韓国選手が相当実力をつけてきたこともすぐ分かる。新聞雑誌がいくら派手に煽ってもホントのことがすぐ分かるし、ウソはすぐバレる。
ホントのことがすぐ分かって何でも見えてしまう世界をサイバーワールドというなら、ケータイ文字が見にくい我々世代にも理解できる。それでも実際はホントのことは分からないし、見えないンじゃないの?とも思う。世の中に神秘はたくさんあるし不思議なことだらけだ。インターネットで何でも分かるなら、次に起きる大地震や私の葬儀日程くらい分かりそうなものだが。
「日本のプロがなぜ世界の舞台で勝てないか」は不思議なことのひとつだ。
本人以外の原因として (1)普段プレーするコースが易しすぎる。(2)マスコミが騒ぎすぎる。(3)親や周囲が干渉しすぎる。本人の原因として◎勉強不足。が考えられる。本人以外の原因については多少ゴルフに関心のある人なら誰もがヤハリと思うだろうが、本人の原因についてはホント?と思う人が多いかもしれない。ゴルフはフィジカルゲーム性よりメンタルゲーム性が強いし、肉体運動というより頭脳運動という方が納得いく。日本のプロが技術的には相当高いレベルにあることは多くの人が認めるところだが、練習方法やトレーニング方法に問題があると睨んでいる専門家は少なくない。
1970年代に入って米国ではゴルフのイノベーションが起きはじめた。オレゴン大学でゴルフ博士号を取得したゲーリー・ワイレンが『法則原理選択性の理論』を発表したことが大きな原因となった。「ボールは誰が打っても物理法則に従って飛ぶことしかできない」という簡単な理論だが、それは殆んどコペルニクスが発表した『地動説』と変わらない。後になれば誰でも分かることが初めて知ったときには大騒ぎになるものらしい。米国ではゴルフの科学的進歩という形でイノベーションに繋がったが、日本では禁止令という形で外国の科学技術を学ぶ道を閉ざす方向に繋がった。地動説と同じ運命を辿ったのである。
世界では「科学的な裏付理論による自由な弾道選択」が常識になり、日本では「猛烈な打球練習による経験と勘の養成」が主流を成している。世界で勝てない理由がホントに勉強不足なら禁止令など無視して今すぐ勉強すれば済むことだが、もし勉強嫌いがホントの原因で勉強不足ならインターネットを見ても何も分からないし、世界で勝てないのも不思議ではない。これは他人事ではなくわたし達にも言えることだ、ということもホントらしい。