ミケルソン優勝の意味
2010年度マスターズはフィル・ミケルソンが16アンダーで優勝したが、今年のマスターズはむしろゴルフ以外の面で大きな関心が寄せられていた。
今年になってタイガー・ウッズの不倫問題が発覚し、大変なスキャンダルとなって世界中大騒ぎとなり、しまいにゲームソフトまで売り出される始末。たまりかねたウッズはマスターズまで全試合を休まざるを得なかったことは、ゴルフをしない女子供でも知っていた。ゴルフ帝王タイガー・ウッズのスキャンダルは米国大統領クリントンのとき以上に大騒ぎだったかもしれない。
一方フィル・ミケルソンは典型的な白人プロテスタントで、真面目なうえ家族を大切にすることで知られている。奥さんがガンと闘っており、昨年からピンクリボンをつけて試合に出ていたが、多くのプロ仲間もピンクリボンをつけて奥さんの回復を祈ってくれていた。アメリカゴルフ界の多くの白人たちは、黒人タイガー・ウッズに王座を奪われて、白人ミケルソンに何とか王座を奪い返して欲しいと思っていたはずだ。ウッズとミケルソンは米国でも人気を二分するライバル同士のうえ黒人と白人、不品行と品行方正、仏教徒とキリスト教徒という具合に余りにも対照的だから本人同士以上に周囲の関心が高まったのは無理のないことといえる。
アメリカの白人社会、特にプロテスタント社会にとって、ゴルフは聖地セントアンドリュウスから伝わる神聖なるゲームであるがゆえに、異教徒や異民族に汚されることは不愉快千万なことなのだ。モンゴル人朝青龍に日本の伝統思想や横綱の名誉が汚されたとして大騒ぎした日本と同じ問題と考えられる。米国によらず世界がグローバル化して、異教徒や異民族が同じ社会で生きてかなければならなくなると、こうした問題が次々起こり対応を誤れば紛争や戦争に発展しかねない。
マスターズが始るまでは試合の途中何かハプニングが起きやしないか心配する人も多かったが、知る限り何事もなかったようだし、マスターズではパトロンと呼ばれる観客も素晴らしいマナーで試合を盛り上げていた。ミケルソンはもちろんウッズにも惜しげない拍手を贈り、ウッズ自身「私を温かく迎えてくれたパトロンの皆さんに感謝します。」と語っていた。ミケルソンが優勝して安堵した人も多いだろうが、本当は一番安堵したのは優勝できなくても無事復帰できたタイガー・ウッズ自身だったに違いない。
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