新世紀のゴルフ
18歳の若者はゴルフユートピアで何を見たか。ビックリ仰天の連続に腰を抜かしたか、自分の無知に気付いて飛び上がったに違いない。アジアの文明国で育った礼儀も知性も備えた勇敢な若ザムライは、英語だって解るし経験も積んでいるのに、なぜ世界の事情が分らないのか。
「君のHandicap Indexいくつ?」と聞かれ、馬鹿言うなプロにハンディキャップがある訳ないじゃないか。「ハンディキャップではなくインデックス。インデックスがないとゴルフできないでしょう?」。何言ってんだろう、この人たち。
「スタートにConversion Tableが掛けてあるからSlope Rate見てしっかりCourse Managementしないとゴルフにならないヨ」。言ってることが全然わからない。スタート小屋の前に行ってみると、オジサンやオバサンが壁に掛けてある表を見てスコアカードに何やら書き込んでいる。若者を見て人なつこく笑って「あなたのインデックスおいくつ?」。また同じ事を聞かれる。チクショウ英語が分るのに何故何を言っているのか分らないのだろう。優しそうなオバサンはきょとんとしている若者に「あら、あなたまだゴルフ始めたばかりなのね。このコースはスロープが高いからホワイトでプレーした方が楽よ。」と言って自分もホワイトティーから軽やかなスイングでフェアウェイセンターにボールを打つと、カートに乗り手を振りながら行ってしまった。俺をナニサマと心得る。
そう、コースにいるのはみんな良きゴルフ仲間で何様は一人もいない。オバマもクリントンもミケルソンもゴルフ場ではみんな良きゴルフ仲間だ。誰と一緒にプレーしようと、ひとり一人がコースハンディキャップを貰ってコースと真剣勝負をしている。誰もがセルフプレーだから、しっかりコースマネジメントをしないと本当にゴルフにならない。コースがタフでお互いに励まし助け合うから、一回一緒にプレーすれば戦友のように仲良くなる。クラブハウスに戻っても「あの時ローピッチの方が良かったかな」「イヤ君のマネジメントは正しい。ロビングでなければ奥が池だからリスキーだよ」「あのホールは僕のハンディキャップホールだから攻めても良かったんじゃないかな」「でもスロープレートが高いからハンディキャップホールを安全にプレーした君のマネジメントは正しかったと思うヨ」。普通のゴルファーが$1コーヒーを飲みながら、難しいことを楽しそうに話し合っている。21世紀に入って世界中がマネジメントゴルフを始めたが、日本のゴルファーだけ蚊帳の外に取り残された。極東の島国に住む日本人は、世界のグローバルスタンダードを知らずに井の中に安住している。ユートピアで若者が味わった驚きは、きっと大きな成長の糧になったはずだ。
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