ゴルフ再生への道 1-01 所有と経営の分離

先週木曜日(2014/03/27)の日経新聞夕刊トップに「アコーディアゴルフ場売却し運営に特化」という記事が掲載された。記事によると現在アコーディアが所有する約130コースのうち、不動産などの権利関係が整理された100コースをシンガポールの投資会社に売却する方針だという。売却したコースはアコーディアがそのまま経営委託を受けてマネジメントを請負うことになるが、この一連の動きを専門的に「所有と経営の分離」という。つまり施設所有者と事業経営者が別れて目的別に機能しようという考えで、解りやすくいえば建物を所有するビルオーナーと建物を借りて事業をするテナントの関係になることを意味する。「なーんだ、そんなことか!」と思うかもしれないが、実は日本のゴルフ界にとっては大変なイノベーションが起きようとしているのである。

 

日本のコースは1960年代まではゴルフ愛好家たちが倶楽部を結成し、自分たちの専用コースを建設するために資金を出し合って創られたものである。例えば東京ゴルフ倶楽部は米国から帰国した井上準之助が財界の仲間と協力して建設した日本で最初の日本人ゴルフ倶楽部だとされている。基本的には60年代までほぼ同じコンセプトで建設されてきたから、コースは会員の共有財産として健全に運営されていた。会員から信任された理事会は支配人はじめ管理スタッフを雇ってコース管理やクラブ運営を行い、会員に経過を報告し結果に対して承認を仰いでいた。コースが災害に遭ったりコースを改造するには会員に諮って資金を出し合い、共有財産を護ったり価値を高める努力をしていた。

 

ところが70年代に入るや経済成長に乗じてゴルフブームが起こり、ゴルフ場事業は不動産開発と会員権発行が融合した日本固有の金融ビジネスに変わっていったのである。実体がなくても度胸と地図と赤鉛筆があれば、誰の土地であろうと30万坪を地図上に赤鉛筆で示しゴルフ場建設予定地とすれば、たちまち何億円もの資金が集まって事業家になれた。計画を発表したものはゴルフ場を開発する不動産事業家であり会員権を発行する金融事業家でもあり、成功すればゴルフ場オーナーとなりゴルフ場経営者となりクラブ理事長となって、所有権と経営権と支配権を掌握したゴルフ場オーナー経営者となったのである。三権を掌握したゴルフ場オーナーは一国一城の主であり専制君主でもあった。競って立派な城を築き贅沢を極めたが、男なら一度はなってみたい身分でもあった。私だってチャンスがあれば是非なりたいと思ったものである。しかし専制君主の時代が長くは続かないことは歴史が証明しており、やがて歴史の教訓どおり衰退崩壊の時代を迎えることになる。

 

ゴルフ再生への道 -2 ゴルフ場戦国動乱期 へ

 

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