ゴルフ再生への道 1-09 産業再生か文化再生か
2003年、経済産業省が『ゴルフ産業崩壊のシナリオ』なるレポートを発表し、このレポートに基づいて業界では『2015年問題』が取り沙汰されている。つまり少子高齢化が進む中、ゴルフ産業の中核を担っていた団塊世代が急速にゴルフからリタイアするため日本のゴルフ産業は一気に崩壊に向かうというのだ。対策としてゴルファーを増やしプレー回数を増やす必要があるというのだが、肝心なのはどうすればゴルファーが増えプレー回数が増えるかという具体策である。日本のゴルフ産業は崩壊すべくして崩壊したというのが真相で、振り返ってみれば日本のゴルフはバブル産業そのものだったから、バブル崩壊と運命を共にせざるを得なかった。一端崩壊したものはSTAP細胞でも使わなければそう簡単には甦らない。
実は米国ゴルフ産業もアメリカ黄金時代にバブル産業として急成長し、1929年のウォール街大暴落によって崩壊している。その後の世界恐慌・世界大戦によって壊滅的に崩壊し、戦後15年経ってようやく再生し始めている。何のことはない米国で起きたことが60年遅れて日本にも起きただけで「世界で歴史は繰り返す」ということか。それならば60年前に米国ゴルフ界は何をして再生したのか検証してみれば自ずと道は見えてくるではないか。日本は世界大戦に大敗し30年で復興した経験があるのだから、悲観的に考えたり難しく考える必要はないはずだ。2015年問題とは『2015年から始まる再生問題』と読み替え、賢者の如く歴史に学ぶならば日本のゴルフは姿を変えて必ず甦るはずだ。
NGFの資料によれば「1920年代には好景気に浮かれた成金たちがアラビヤ宮殿のようなクラブハウスで日夜ドンチャン騒ぎをしていたが、30年代に入るや世界恐慌によって毎年150件ものゴルフ場が倒産していった」と辛辣に語っている。このままでは英国で発祥したゴルフの伝統が米国に渡って崩壊してしまう事を心配して1936年にNGFが設立された。残念ながら人間は時代や社会が変わっても「前車の轍」を踏みながらでなければ進歩成長しないものらしい。だったら何も恐れずに勇敢に前者の轍を踏み、前車に追いつき追い越して今度は後車のためにより良い轍を残せばよいではないか。
米国ゴルフ産業は再生に当たって、二度と不動産バブル崩壊の轍を踏むことはなかった。再生の方向は不動産や金融の産業再生ではなく、教育や文化の再生だったために世界一のゴルフ大国に発展したと考えられる。不動産価値を追い求めて崩壊したゴルフ場をスクラップして、教育価値や文化価値に事業転化してゴルフを環境開発や生活文化に応用していったのである。ゴルフのある生活環境やゴルフ場のある地域社会、ゴルフを応用した教育制度やゴルフを導入した福祉制度などゴルフ文化の活用によって見事に再生した。