ゴルフ再生への道 2-12 2020東京オリンピックの後に

2015年になると日本のゴルフ界にも教育界にも劇的な変化が見られるだろう。ゴルフ界では2015年問題つまり団塊世代がゴルフから引退し始め、教育界ではeラーニングが普及し始める。そうすると日本のゴルフ教育改革はeラーニングによって起こり、ゴルフ再生もeラーニングによって実現するのではないかという予感がするのである。情報通信革命の波に乗ってゴルフ教育もゴルフ産業も再生復活するとなれば、2020東京オリンピックまでの5年間は劇的ゴールデンタイムになるはずだ。「崩壊のシナリオ」が「復活のシナリオ」に書き換えられるのだが、そのシナリオを書き換えるのはゴルフを愛し東京オリンピックの成功を願う大衆ゴルファーなのだ。決して行政機関や業界団体ではない。

 

2020年までのゴールデンタイムに、大人と子供がeラーニングによって一緒に正統ゴルフを学び科学的トレーニングを行う。一緒に練習試合をしスコアカードを提出して世界共通ハンディキャップやバッジを取得する。eラーニングだからこそ、日本各地でこのような草の根活動が展開できる。地方に行くほど身近に空いていて安価なゴルフ場があるから、都市部より地方の方が遥かに有利な環境に恵まれる。eラーニングの時代は、地方にいても最初から世界基準の正統ゴルフを習うことができるから、地方にどんな逸材が育つか楽しみだ。都会で雑多な情報に惑わされながら育つのと違い、地方なら欧州田舎育ちのマキロイやカイマーのような素朴で強靭なゴルファーが育つだろう。

 

情報通信革命の時代は、eラーニングシステムによって燎原の火の如く全国各地に教育改革が進み、2020年には全く違った教育環境が整っているに違いない。東京オリンピックを成功させようと正統ゴルフや伝統ゴルフを学んだエリートゴルファーは、ソーシャルネットワークを通じて都会のエンジョイゴルファーにも大きな影響を及ぼすはずだ。2020年、東京オリンピックが終わってみれば日本のゴルフマーケットは一変しているだろう。消費者がマーケットを変え、マーケットが事業者や業界を変えるのが自由競争市場の原理だから、行政機関や業界団体が規制や談合によって市場操作するよりも、市場原理に委ねる方が遥かに大規模で自由活発な発展が期待できるはずだ。

 

東京オリンピックの後には、日本のゴルフが質量ともに高度成長するシナリオが待っている。成長したゴルファーを迎える業界スタッフもeラーニングシステムによって高度な技術や専門知識を身に付けていなければならない。そうなれば日本は世界屈指のゴルフ環境を備えた国に成長しているはずだから、アジア・アラブ・南米・アフリカからも夢を持った若者が集まってくるだろう。現時点では2030年に日本のゴルフ産業は崩壊することになっているが、おっとどっこいシナリオを書き換えれば情報通信革命と東京オリンピックをバネにして強かにゴルフ文化大国に成長するチャンスが待っているのだ。

 

「ゴルフ再生への道」 シリーズ2 教育改革と人材育成  完

 

 

ゴルフ再生への道 1-11 自然保護と環境開発

ゴルフ場建設盛んな頃、地方の農協や森林組合から度々ゴルフ場建設誘致の相談を受けた。減反政策や農地法によって自由な土地利用を制限された農協は段々と荒廃し過疎化していく農村の対策に頭を痛めていたし、需要減少と安価な輸入木材に圧迫されて森林を維持することすらできなくなった森林組合は自然保護や環境保全に頭を痛めていた。無責任なマスコミ報道に焚き付けられた世論や有識者は「のどかな田園やゆたかな森林は日本の宝だ!」と声高に叫ぶが田園や森林を維持するには多くの人手と資金を必要とすることを全然理解していない。ゴルフ場誘致は人手と資金を得る一石二鳥の策というのだ。

 

ところが自然保護団体や市民活動家は「ゴルフ場開発こそ自然破壊の元凶!」と声高に叫びプラカードや立看板を林立させて建設に反対する。確かに成田空港に着陸するとき見る房総半島は悪ガキが悪戯した掻き傷のようにゴルフ場が乱立し誰が見ても自然破壊に見える。ところが実際は「自然放置こそ自然破壊の元凶!」なのだ。アメリカ上空からパームスプリングスやラスベガスに着陸するとき、サソリとガラガラ蛇しか生きられない荒涼たる地に忽然と緑豊かな巨大オアシスが出現する。無数のゴルフ場周辺に美しい街が整然と造られ、人の手によって豊かな生活環境が開発されているのに驚く。自然を放置すれば人を寄せ付けぬ荒涼地となり、人が利用すれば豊かな自然を取り戻すことが一目瞭然に理解できる。

 

2015年問題に倒産ゴルフ場を放置したらどうなるかという問題がある。森林や田畑を開発してゴルフ場を建設したが、もう元の森林や田畑には戻らないし放置すれば間違いなく廃墟となり公害問題に発展する。新たにゴルフ場を建設するには10年の歳月と30億の資金が必要なことを考えれば倒産ゴルフ場を放置する手はない。ゴルフ場周辺を再開発してシルバータウンを建設する手がある。元々カントリークラブは田舎に造られた別天地を意味するわけだから、ゴルフ場を中心にコミュニティクラブ、福祉施設、住宅、酪農場、果樹園、民芸工場などを造って第三の人生を豊かに過ごすゴルフユートピアを建設する策だ。

 

米国では1ゴルフ場(18ホール)当たり400世帯が標準となっているが、高齢者400世帯は人口にして600人位だろうか。地方分権や地方活性化が叫ばれているいま、都市高齢者が豊富な個人資産や年金収入、高度な知見や技術を携えて地方に集団移住することは革命に値する出来事になるだろう。全国2400コースの三分の一、800コースがシルバータウンに変わるならば480,000人が地方分散することになる。シルバータウンは電気・水道・食料・医療の自給体制を備えるだけではなく余剰生産を積極的に都市や外国へ輸出する独立経済自治区でもある。IT武装したシルバータウンは知的財産収入や配当収益も稼ぐだろう。

 

ゴルフ再生への道 1-09 産業再生か文化再生か

2003年、経済産業省が『ゴルフ産業崩壊のシナリオ』なるレポートを発表し、このレポートに基づいて業界では『2015年問題』が取り沙汰されている。つまり少子高齢化が進む中、ゴルフ産業の中核を担っていた団塊世代が急速にゴルフからリタイアするため日本のゴルフ産業は一気に崩壊に向かうというのだ。対策としてゴルファーを増やしプレー回数を増やす必要があるというのだが、肝心なのはどうすればゴルファーが増えプレー回数が増えるかという具体策である。日本のゴルフ産業は崩壊すべくして崩壊したというのが真相で、振り返ってみれば日本のゴルフはバブル産業そのものだったから、バブル崩壊と運命を共にせざるを得なかった。一端崩壊したものはSTAP細胞でも使わなければそう簡単には甦らない。

 

実は米国ゴルフ産業もアメリカ黄金時代にバブル産業として急成長し、1929年のウォール街大暴落によって崩壊している。その後の世界恐慌・世界大戦によって壊滅的に崩壊し、戦後15年経ってようやく再生し始めている。何のことはない米国で起きたことが60年遅れて日本にも起きただけで「世界で歴史は繰り返す」ということか。それならば60年前に米国ゴルフ界は何をして再生したのか検証してみれば自ずと道は見えてくるではないか。日本は世界大戦に大敗し30年で復興した経験があるのだから、悲観的に考えたり難しく考える必要はないはずだ。2015年問題とは『2015年から始まる再生問題』と読み替え、賢者の如く歴史に学ぶならば日本のゴルフは姿を変えて必ず甦るはずだ。

 

NGFの資料によれば「1920年代には好景気に浮かれた成金たちがアラビヤ宮殿のようなクラブハウスで日夜ドンチャン騒ぎをしていたが、30年代に入るや世界恐慌によって毎年150件ものゴルフ場が倒産していった」と辛辣に語っている。このままでは英国で発祥したゴルフの伝統が米国に渡って崩壊してしまう事を心配して1936年にNGFが設立された。残念ながら人間は時代や社会が変わっても「前車の轍」を踏みながらでなければ進歩成長しないものらしい。だったら何も恐れずに勇敢に前者の轍を踏み、前車に追いつき追い越して今度は後車のためにより良い轍を残せばよいではないか。

 

米国ゴルフ産業は再生に当たって、二度と不動産バブル崩壊の轍を踏むことはなかった。再生の方向は不動産や金融の産業再生ではなく、教育や文化の再生だったために世界一のゴルフ大国に発展したと考えられる。不動産価値を追い求めて崩壊したゴルフ場をスクラップして、教育価値や文化価値に事業転化してゴルフを環境開発や生活文化に応用していったのである。ゴルフのある生活環境やゴルフ場のある地域社会、ゴルフを応用した教育制度やゴルフを導入した福祉制度などゴルフ文化の活用によって見事に再生した。