ゴルフ再生への道 2-01 教育格差と経済格差

明治維新によって240年間続いた士農工商の身分格差がなくなり四民平等社会が実現したばかりの明治5年に『学問のすすめ』を著した福沢諭吉は、この本がたちまち70万冊も刊行されたことに自身驚きの声を発している。当時の人口は3,500万人だから実に160人に一人が読んだことになり、現在の人口に換算すると約3.5倍の250万部の大ベストセラーを生んだことになる。「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言えり」で始まる『学問のすすめ』は第1章でいきなり「人は生まれながらにして貴賎貧富の別なし。ただ学問を勤めて物事を良く知るものは貴人となり富人となり、無学なる者は貧人となり下人となるなり」と教育格差こそ身分格差や経済格差の元凶だと言い放った。

 

最近、尾木ママがテレビで「今の日本の教育で重大な問題点は、進学にお金が掛かり過ぎるために経済格差が教育格差を生み、教育格差が更なる経済格差を生む負のスパイラルに歯止めが掛からないことだ」と深刻に語っていた。まさに140年前に福沢諭吉が指摘したことと表裏の現象が、今の日本社会に進行しつつあるというのだが、更に悪いことは教育そのものよりも受験テクニックを学ぶ受験勉強に莫大なお金が掛かることだという。実社会で何の役にも立たない受験テクニックだけに秀でた高学歴者で構成される格差社会は社会のリーダーもエリートも生まないばかりか、一端この格差社会に入りそこなったら二度と這い上がれない泥沼社会に転落することでもあるいう。

 

いま世界はグローバルに教育格差と経済格差をなくす方向に進んでいる。インターネットによる情報通信革命が安価なオンデマンド学習を可能にし、マサチュセッツ工科大学から始まったオープンコースウェアと称する全講義をネット上に無料公開するシステムが世界中に広がり教育環境を根底から覆している。世界の如何なる僻地からも、格差社会のどん底からも本人の意思と覚悟があれば世界最高の教育が受けられる時代が始まった。福沢諭吉が説いた『学問のすすめ』はいま世界規模で展開されているのだ。日本という極東島国の常識に捉われて世界の動向を見ないものは、自らを世界格差のどん底に追いやることになる。

 

ピーター・ドラッカーは「IT革命の成果は何よりも教育システムの変革に強く現れる」と断言して世を去った。なるほど「インターネットは学習の高速道路」といわれるほど学習方法を革命的に変えている。安価なパソコンやタブレットを使ってアクセスすれば、地位・身分・格差を問われることなく誰でも僅か1秒足らずで情報の山や知識の宝庫に入ることができる。いまや誰かが教えてくれるのを待っている時代ではない。自分から無料高速道路を飛ばして世界に学びにいく時代なのだ。

 

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