用具の進化と国際標準
(社)日本野球機構がボールの問題で揺れている。野球機構が定めた公式ボールが事務局長の極秘命令で基準以上に飛ぶように造られていたという。命令されてボールを製造したメーカーは「ミズノ」だそうだが、スポーツ団体の元締めは全て文部省であり、その文部省とミズノの関係は古い。戦前戦後を通じ文部省が掲げた国民体位の向上と学校体育の振興に「美津濃」は献身的に協力してきたといわれている。全てのはじまりは昭和15年、世界大戦に突入するための準備として「国家総動員法」を定め、戦争に供する資源をことごとく政府の統制下に収めて管理したことにあった。世界を相手に戦争するには「物資」だけでなく「国民」が最重要資源であるから、文部省管轄のもとにある学校体育を軍事教練化して、青少年を徹底的に鍛え上げて世界最強の兵士を養成した。戦後は国民スポーツの振興に名を変えて今日までその体制が続いている。安倍首相が叫ぶ「アンシャンレジーム(旧体制)の打破」とはこの体制打破のことであり、「構造改革」とは政官業癒着構造の改革のことを指している。「日本相撲協会」「日本柔道連盟」「日本野球機構」ついでに「検定教科書」「靖国神社」も文部省管轄下にある。「日本ゴルフ協会」「日本プロゴルフ協会」も文部省管轄下にあることも忘れてはならない。
ゴルフが文部省の管轄下に入ったのはそれほど古い話ではない。日本プロゴルフ協会が1983年、日本(アマチュア)ゴルフ協会が1987年だから30年ほど前の話である。ともに文部省公益法人「国民体育協会」の傘下にあって、プロ協会はプロ競技開催権と指導資格認定権を、アマチュア協会はアマチュア競技開催権とハンディキャップ認定権という利権を支配している。「それがどうした」といわれると二の句が告げないが、言いたいことは「国民の国民による国民のためのスポーツになるとい~な」ということ。ゴルフルール、ハンディキャップ、ボール他用具は「全米ゴルフ協会」と「英国R&A」が統一基準を定めて管理しているから文部省は手も足も出ないが、野球もゴルフも用具でボールを飛ばすゲームだから、ボールに関する国際基準は厳しい。かつてゴルフボールは米国と英国では大きさが違っていた。日本では英国のスモールボールを使っていたから、米国のラージボールを使うと重くて飛ばないうえ、歯を食いしばって叩くと大きく曲がる「やっかいもの」だった。やがてラージボールに国際基準が統一されゴルフの技術もボールの製造技術も飛躍的に向上したといわれている。今ではボールが飛び過ぎて、ゲーム性においても安全性においても実に困った問題になっている。やがて国際基準が変わるのではないか。
一方米国ではボールの価格は昔から1個2ドルが相場だったから、円安の時代には実に高価な貴重品だった。ニューボール1個の値段は一日のバイト代に匹敵したから、ロストボールをボロボロになるまで使っていたものだが、あるときボールの切り傷にマジックインキで印をつけたところ、43箇所に手傷を負っていたので「斬られの与三郎」と名付けたことがあった。ところが不思議なことに1ドル360円の時代から90円の時代になっても、国内価格はずっと1個800円が続いたのは一体何だったのか。為替相場からいえば当然一個200円でなくてはならないが、安売り量販店に行かないとその値段では買えない。是非ともTPPの議案に乗せて欲しいものだが、ついでにボールだけでなくクラブやプレー代も国際標準になるよう話し合って頂けませんかねぇ。
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