東京オリンピックゴルフの思い

2020年東京オリンピック開催が決まった瞬間、日本中がパット明るくなり株価も上昇した。日本はバブル崩壊後、失業倒産の嵐が吹き荒れ仕事や財産を失うものが続出して何をやっても巧くいかない時代が続いた。そこに地震や津波が一瞬にして人々から全てを奪う光景をライブで見せられ、私たちは過酷な現実や自然の掟をイヤというほど学ばされた。かつて私たちの先祖は源平の合戦や応仁の乱で都が焼失し人々が難民と化した経験や、地震や津波で村や街が全滅する災害を何度も経験してきている。空襲と原爆で日本の主要都市が全滅してから未だ70年経っていない。私たち日本人が忍耐強いといわれるのは苛酷な環境を生き延びた先人たちから受け継いだDNAのお陰かもしれない。

 

オリンピック招致に貢献した義足のアスリート佐藤真海さんのスピーチは忍耐強い日本国民の代表にふさわしかった。大学のチアガールをしていた佐藤さんは1年生のとき骨肉腫で右足を失い絶望の渕に落とされたが、義足をつけて陸上選手として復活した。ところが間もなく今度は気仙沼の実家が津波に流されるという不幸に見舞われ生きる気力さえ失いかけたという。ところが度重なる人生のトラブルを見事に跳ね返してロンドンオリンピックに出場したのである。佐藤さんの姿は私たちにとって励まし以上に教訓となり、そのスピーチは多くの人に感動と希望を与えただけでなく、オリンピック選考委員の人たちの心も強く揺り動かしたに違いない。

 

2020年東京オリンピック開催はゴルフにとっても大きな意味がある。金融投資や商業娯楽の対象として発展した日本のゴルフはバブル崩壊によって大破綻し復活の見通しも立たないまま、ついに経済産業省が「このまま対策を講じなければ2030年にゴルフ産業は崩壊するだろう」という予測を発表しなければならない状況に陥っている。毎年発表される経済産業省の統計データは確実に崩壊の道を辿っている姿を浮き彫りにしているが、オリンピック開催決定が何らかの対策を講じるきっかけになれば日本のゴルフは崩壊から救われるだけでなく見事に復活するかもしれない。佐藤さんのスピーチにそんな力を感じた。

 

日本のゴルフがすっかりガラパゴス化していることは何度かブログに書いたが、2020年を目標に日本のゴルフを根本から見直して、世界中でゴルフが発展しているのに、なぜ日本だけが衰退するのか徹底的に検証してみなければいけないと感じた。私は人生の半分に当たる35年間、日本のゴルフは必ずいつか米国に追いつき追い越せると信じてきたが、今では「もう駄目だ」という思いが強い。少なくとも「自分が生きている間にはありえない」という思いになっていたところ、佐藤さんのメッセージを聞き2020年東京オリンピック決定を知って考えが少し変わった。今こそ鎖国体制を解いて2020年に向かって英米の正統ゴルフを学び直すなら、オリンピックのときに追いつかないまでも背中が見える射程内に捉えることができるかもしれない。2020年までは生き伸びて何としてもこの目で確かめたい思いは日増しにつのる。