ゴルフの団体戦

先週「2013プレジデンツカップ」がアメリカで開催され、日本から松山英樹が選手として選ばれ出場した。プレジデンツカップというのはアメリカチーム対アメリカ・ヨーロッパ以外の地域選抜チームとの団体戦のことで両チーム各12名の選手で構成される。1994年から始まったプレジデンツカップに対し1927年から始まった歴史と伝統を誇るアメリカ対ヨーロッパの対抗戦「ライダーカップ」がある。「ライダーカップ」は遇数年に開催され「プレジデンツカップ」は奇数年に開催されるので、アメリカだけ毎年試合をしていることになる。

 

どちらの試合も日本では余り馴染みがないようだが、マッチプレーによる団体対抗戦という試合形式が良く分からないことと、日本からの出場選手が少ないことによるのだろう。日本のゴルフが野球やサッカーに比べてイマイチ盛り上がらないのは個人戦によるからではないかと思う。野球にしろサッカーにしろチームフ ラッグを振って応援合戦するのに比べ、ゴルフの個人戦はお通夜のような静けさが漂う。ところがゴルフでも団体戦となるとマナーを守りながらも運動会のよう なお祭り騒ぎになるから、どうも競技形式の違いらしい。

 

日本のゴルフ競技からマッチプレーと団体戦がすっかり影を潜めてしまった。どこの競技に参加しても新ぺリア・ストロークプレーばかりで、よほど調子が良いか、くじ運が良いとき以外は面白くもない。いまでは殆どのゴルファーが団体戦やマッチプレーの経験がなく、やろうと誘っても反ってつまらなそうな顔をされてしまう。一度やってみれば初心者も上級者も、女性も高齢者も子供のように興奮してはしゃぎまわるのに。

 

「ワンボールゲーム」「ペアマッチ」「スクランブルゲーム」「ステーブルフォード」などの競技は初心者プログラムと思っている人が多いようだが、実はライダーカップやクラブ競技として行われる正統ゴルフなのである。オリンピック種目の「団体戦」や「マッチプレー」を日本中で楽しむ環境が整えば、東京オリンピッ クに向けて日本のゴルフはどんどん活性化するだろう。団体戦やマッチプレー、ハンディキャップインデックスやコースマネジメントの普及はゴルフ文化のバロ メーターなのである。

 

 

ゴルフの怒り

ゴルフゲームは基本的にマッチプレーとストロークプレーしかない。マッチプレーは人と人の勝負で、ストロークプレーは人とコースの勝負だ。最近日本でマッチプレーをする人を殆んど見なくなった。イギリスでは今でもストロークプレーをする人は殆んどいないらしい。スポーツは全て誰かを相手に勝負するものだから、誰を相手に闘っているか忘れると勝負にならない。
実際にゴルフをしている人で、どれだけの人が闘う相手が誰かを認識しているかとなると甚だ疑問だ。私も含めてほとんどの人が自分と闘ってしまっているのではないか。もしそうでなければ、あんなに腹が立ったり情けなくなるはずがない。みんな自分に腹が立ち情けなくなるのだ。だってコースが相手だと承知の上でプレーしているし、コースは自分に何をした訳ではないことも良く分かっているから、結局は自業自得と諦めなくてはならない。それがしゃくの種なのだ。どんなに人格者といわれる人でも、目尻がつり上がったり唇をかみ締めたりするから、相当怒っているなと分っておかしい。「笑っちゃ悪いよ」と思うともっとおかしくなる。今でも20年も30年も前の出来事を思い出して一人で笑うことが時々ある。笑われた相手は今でも思い出して腹を立てているかと思うと、またおかしくなる。自分もきっと誰かに笑われているに違いないと思えば「おあいこ」ということで許されるだろう。

 

テレビで観ているとタイガー・ウッズと石川遼の顔が引きつっている。心中穏やかでないことがすぐ分かるほどだから、二人ともコースと無心に闘う心境ではないのだろう。タイガー・ウッズが心中穏やかじゃないことは良く分かるが、石川遼は何が原因だろう。付きまとうマスコミやファンか、コマーシャルの煩わしい仕事か。メンタルスポーツの代表のように言われるゴルフの世界で雑念は絶対禁物だが、二人には雑念が多すぎるのではないか。去年の二人の顔は輝いていたが、今年はいささかくすぶっている。最もタイガーは父親を失ってから心の支えを失ったせいか、王者の風格がなくなり些細なことに腹を立ててイライラしていることが良くあった。ゴルフが王者になれても人間はなかなか王者になれないことを証明しているようだ。

 

王者の風格というと野球のイチローと松井選手、相撲の白鳳、水泳の北島選手、ゴルフでは宮里藍に見られるようになった。風格ってナンだといわれると困るが、闘う相手を良く弁えて決して自分や他人に腹を立てず、少なくとも他人に悟られることなく、自分で解決できる人に備わるものなのだろう。聖書はいう「怒りを治めるものは勇士に勝る」と。でもエンジョイゴルファーにとっては「怒るも愛嬌のうち」と思っておおらかにゴルフを楽しみたいものだ。