ゴルフプロの仕事

日本でゴルフのプロというとトーナメントプロとレッスンプロを指すが、欧米豪州カナダではクラブプロやビジネスプロを指す。ゴルフ大国アメリカには何万人ものゴルフプロがいるが、そのうちトーナメントプロはせいぜい1000人前後、レッスンプロはほんの僅かしかいない。「えっ!」と思うかもしれないが、日本のゴルフ界の構造が欧米諸国と根本的に異なる点のひとつなのだ。ゴルフの分野だけでなく、いろいろな分野で日本の特殊性が明らかになってくるだろうが、それがグローバル化の特徴でもある。今年はTPP交渉参加の是非を国民レベルで検討しなければならないが、私たち国民一人一人が自分本位や日本の国益本位で物事を判断する訳にはいかない時代が到来したということだろう。

 

幕末の時代に鎖国によって徳川幕藩体制を守ろうとした人々も、外国人を獣のように毛嫌いした人々も、そのとき世界で何が起きているのか、欧米諸国はどうなっているのか知らない人たちだった。アメリカでは独立戦争が終わり自由平等を掲げる民主国家が成立していたし、フランスでもフランス革命が終わり自由平等博愛の理念の下に共和国が成立していた。幕末の若者は吉田松陰に象徴されるように、処刑されることが分かっていても自分の目で世界を見たかったのだろう。若者の好奇心と情熱が時代を変え社会を変えていったことを思うと、日本の構造改革や規制緩和が一向に進まずどんどんガラパゴス化していくのはなぜか、まことに不思議なのである。もし日本の若者がいまの日本に満足して現状維持したいと考えているならば、それこそ天下泰平というべきで何も言うことはない。しかし現実は学校卒業しても仕事がない、結婚したくても家庭が支えられない、子供が生まれても育てられない。ましてゴルフがしたくても余裕がなくてできない。いま世界で何が起きているというのだろうか。

 

世界はいまグローバル化に向けてまっしぐらに進んでいる。ヒト・モノ・カネが国境を越えて自由に移動する時代が到来したのだ。街に出れば外国語を話している人が一杯いるし、店をのぞけば外国産の商品が一杯あふれ、銀行に行けばいろいろな外国紙幣が交換されている。やがて自分は何処の国で暮らしているか分からなくなるかもしれない。そんな世の中で日本のプロだけが日本固有の姿で存在していることを誰も疑問に感じていないようだ。欧米諸国のゴルフ場はほとんど全てプロが経営しているのに対して、日本ではプロが経営しているゴルフ場はほとんどない。ゴルフ場はトーナメントプロやレッスンプロでは経営できないから、欧米諸国では大学やビジネススクールでクラブプロやビジネスプロを養成している。欧米諸国はどうなっているのか知らないとすれば、日本のゴルフ界の人たちは幕末の人たちとなんら変わらないことになってしまう。