国際化しない日本のゴルフ

文部大臣の指導資格認定証はゴルフ界にもある。日本プロゴルフ協会が発行するインストラクター資格には時の文部科学大臣の名前がデカデカと書いてあるから有難い免許皆伝に違いない。しかしゴルフは世界中で行われているスポーツだし、とっくの昔に国際化しているはずだから、今さら日本国文部大臣認定もなさそうだ。リオデジャネイロ・オリンピックから正式種目に採用されるから、いよいよグローバル化といえるが、その前提条件として世界統一基準や統一規則が採用されたことがあげられる。競技をつかさどる規則は米国USGAと英国R&Aによって世界統一されているし、コースの難度査定やプレーヤーの技量評価もUSGA基準によって世界統一されている。最も大切なプレーヤーの養成や育成は独自の創意工夫や研究努力,それをサポートするコーチの能力に委ねられている。欧米諸国は勿論、中国や北朝鮮でもゴルフコーチの国家認定制度や行政保護政策などないが、日本では文部省が競技団体や指導者団体を行政管理下に治め、保護規制によって自由活動を制限している。「文部省公認団体は外国技術ノウハウの導入を禁止する」「文部省の認めない団体に加担協力したものはプロ資格を剥奪する」「文部省の認めない機関の教育を受けたものは、アマチュア資格喪失の原因となる」等々。日本の社会構造は国際化された自由な世界と思われているスポーツ界ですら、実は行政の統制下にあって民間の事業活動が規制されたり制限されている。以前から「構造改革」や「規制緩和」が叫ばれているが、実態や現実を分かっている人は政治家やマスコミも含めて極めて少ない。相撲協会や柔道連盟と同じようにゴルフ団体の構造や規制についても、実態が分かっている人は殆どいない。

 

TPP交渉参加の意味は、幕末に欧米列強から通商条約の批准を求められたのに良く似ている。日本に住んでいると日本は何でもできる自由な国に思えるが、実は規制や制約が多くあって、新しいことや革新的なことは何も出来ないガラパゴス島であることに気がついていない。「井の中のカワズ、大海を知らず」という諺があるが、日本ガラパゴス島に住む日本人には世界の実態が分からない。「知らぬが仏」という諺もあるが、知らないことによってかえって平和でいられることも多いから知ろうとしないのかもしれない。日本で土日祭日にゴルフをしようと思えば、近郊ならメンバーに頼んで高いビジター料金を払うか、近県なら高い高速道路料金と平日の五割増料金を払わなければならない。どっちが安くつくか考えさせられるが、欧米豪州カナダでは想像もできない実態なのである。土日祭日料金が高いことも、18ホールプレーするのに200ドル300ドルもかかることも、高速道路をたった2,3時間走って何千円もかかることも、娯楽施設利用税が掛かることも、子供料金がないことも、公営ゴルフ場も民営ゴルフ場も同じ料金体系であることも、全てガラパゴス島固有の実態なのである。外国でゴルフをした人や高速道路を走った経験がある人は多いはずだが、なぜこんなにも違うのか疑問に思う人が少ないのも不思議なことだ。ここは日本だからと簡単に割り切ってしまうようだが、日本と外国は違うのが当たり前と考えているのかもしれない。日本と外国では違っていて当たり前なことと、同じである方が当たり前のことを協議する場をTPPとするならば、一刻も早く参加した方が良いに決まっている。誰にとって良いかといえば国民や大衆にとってであり、ゴルフに関するならば一般大衆ゴルファーにとってである。決して特定業者、特定団体、特定議員、特定役人にとってではない。